消化と吸収を助ける「ヨガ的な食事」㉕【by 平田ホリスティック教育財団 理事 丸元康生】

 30年ほど前のことですが、お世話になっていたお坊さん(師としておきます)から、「君は、座禅をした方がいいね」とアドバイスをいただいたことがあります。「鎌倉の建長寺の住職が毎月1回東京で座禅会をされているんじゃ。紹介状を書いてあげるから、行ってきなさい」と言われ、通い始めました。

 しばらくして師から、「どうじゃな。座禅はうまくできているかな」と聞かれました。

私:いや~ なかなか難しいですね。雑念ばかり浮かんで。

師:そうか。でも、一日の中で雑念が浮かばない時間もあるじゃろ。それはどんな時かな?

私:……ないですね。いつでも雑念だらけです。

師:そんなことないじゃろ。よく考えてみなさい。

私:……料理をしている時は、何も考えずに没頭しているかもしれません。

師:それじゃ!それが三昧というものじゃて。その感覚を大事にしなさい。君にとっては、料理をしている時が、立派な瞑想になっているんじゃ。


 瞑想にもいろいろなかたちがあることを、この時に教えていただきました。科学的な根拠のあるストレスマネジメント法として話題の「マインドフルネス」にも、レーズンを使った「食べる瞑想」があります。

 瞑想になじみのない人でも、意識を集中する練習になる、入門的なエクササイズです。ぼくのように瞑想しようとしても雑念ばかりになってしまう方は、試してみてはいかがでしょうか。


 用意するものは、レーズン2粒。ナッツでもかまいません。

 床に座禅を組むように座ってもいいし、イスでもいいので、楽な姿勢で座ります。

 レーズン1粒を手にとって、見つめます。生まれて初めてレーズンを見た気持ちになって、レーズンを細かく観察してください。

 この「初めて見た」気持ちになることが、大切なポイントです。私たちの毎日には、本来ありふれた時間はないはずです。一瞬一瞬が、前にも後にもない、スペシャルな瞬間のはず。でも、何百回も見てきたもの、何千回も経験してきたこととして、漫然と流してしまっています。

 目の前にあるかけがえのない一瞬に意識を集中するトレーニングとして、新鮮な感覚でレーズンと向き合ってみましょう。レーズンを手のひらにのせて転がしながら、どんな色をしているか、光沢、質感、表面にある小さなデコボコまで、細かく観察します。つまんだ時に指に伝わる感触、弾力も確かめてください。

 ゆっくりと鼻に近づけて、匂いを嗅いでみます。すべての動作をゆっくり、丁寧に行います。

 ゆっくりと、口に近づけていきます。まだ口にはいれないでください。「これからこれを食べるんだ」と予想するだけで、唾液が出てくるかもしれません。その唾液も感じてください。

 レーズンをゆっくりと口にふくみます。まだ、かんではいけません。舌の上にのせてレーズンを感じます。舌先でころがしたり、しゃぶったりしながら、レーズンの味、重さ、硬さ、柔らかさを感じてください。

 次に、ゆっくりとかんでみます。口の中に広がる風味、増えていく唾液を感じます。細かくかみしめていくうちに、変化していく感覚に意識を集中します。

 十分に細かくかみ砕き、十分に味わったら、ゆっくりと飲み込みます。静かに食道を下りいく様子を追跡しましょう。レーズン1粒分だけ、からだが重くなったように感じられるかもしれません。

 そこまで終わったら、もう1粒のレーズンも同じように見つめて、かみしめて、のみこみます。全体で10分くらいかけて、ゆっくりと観察してください。

 途中で、いろいろと雑念が湧いてくるかもしれません。それは、全然かまいません。雑念が浮かんだら、レーズンに意識を戻して集中してください。その切り替えをしなやかにできるようにするためのエクササイズなのです。

 ぼくなどは通常の瞑想をしていると、「あっ、また雑念が浮かんでる。いけない、いけない、雑念を消さないと……」と頭の中で終始格闘してしまうのですが、レーズンのような意識を集中する拠り所があると、雑念が浮かんでもあわてずに対処しやすいです。

 この瞑想法は、日常の食事にも応用できます。それについては、次回お話しましょう。

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